事務所 ほんまごめん

メモ程度に書きます

いつか担当が『千年メドレー』を踊る日のために② ~千年の季節の謎 解明編

 

前回に引き続き『千年メドレー』について書いていきます

 

千年の季節とは何だったのか?

ところで『千年の季節』とはどのような曲だったのでしょうか?まずは歌詞から見ていきましょう。

春は桜吹雪 風が踊らせる

萌える夏の色と「草」木の薫り

 過ぎる季節を 眺めながらの

いつもは気づかないことも見えてきそうだよ

 月を枕に 今宵一夜に

千年の夢 語りあかそうか

 

「東」の空につきが 浮かぶ

まるで 歌を詠うように

眠りに落ちるまで

聞かせたい 物語さ Wo…Oh…

 引用:『千年の季節』

この曲は『万葉集』の集歌2381を下敷きに作られた歌ではないかと考えています。

「君が目を 見まく欲りして この二夜 千年のごとも 我は恋ふるかも」

超訳:あなたに逢いたくて この二夜がまるで千年のように感じるぐらい 私は貴方を思っています

引用:『万葉集』集歌2381

 

PLAYZONE’90 MASK』劇中ではヒガシが『万葉集』の編纂者である「大伴家持」や「柿本人麻呂」らしき人物を模して、和装で歌を詠い踊ります。

 歌詞を見ると、「草」「東」はありますが、「錦」はありません。これは舞台のストーリーと関連していて、少年隊として活動を続けていくはずだったのに、ニシキ(錦織)が突然理由も告げずニューヨークへ旅立ってしまい、残されたヒガシ(東山)とウエクサ(植草)はニシキの身勝手な行動に憤りも感じつつも、一緒に活動してきた仲間を恋しく思い、もう3人で活動することは夢になってしまったのかと悩むという話に繋がります。ジャニオタも苦しくなる話の展開、、、

 

『千年の季節』はニシキが居なくなったことを暗示し、ニシキに思い焦がれる歌になっています。万葉集では「千年」を「ちとせ」と読むので、KTKの初期時代は「ヒガシの千年(ちとせ)」と言っている人(文字でしか見たことがないので)もけっこういたのですが、KTKの番宣でジュニアの口から「せんねんメドレー」と発せられたことにより、「せんねん」だったのね…っていうこともありました。

 

 

■ 千年メドレーの誕生 ※『PLAYZONE’90 MASK』のネタバレ含みます

PLAYZONE’90 MASK』のサントラCDと劇中歌の歌詞・曲名が変わったのには、劇中劇「ハムレット」ないしはシェイクスピアが大きく関わっています。『千年メドレー』は劇中劇のセリフと歌詞、シェイクスピア劇とダンスの振付がリンクするように成り立っています。まずは、『千年メドレー』が登場する前後の劇中の流れから説明します。

 その前に『PLAYZONE’90 MASK』のあらすじを

『少年隊PLAYZONE’90 MASK』 STORY

少年隊ミュージカル「AGAIN」の千秋楽が終わった後、錦織が突然理由も告げずニューヨークへ旅立ってしまった。残された東山と植草は、その勝手な行動に激しい憤りと、疑問を感じる。酒を飲み、やりきれない思いを語り、そして酔いつぶれる二人。錦織は、夢の中でも二人を悩ませる。しばらくして、依然として悩む東山と、吹っ切れてしまったかのように見える植草。そんな二人が「ハムレット」で共演することになった。東山が演じるハムレットと、植草のホレーショーが、暗殺の事実を知り復習を誓う場面。亡霊が仮面を外すと、現れたのは錦織の姿。それを見た植草は、それまでの錦織に対する悶々とした気持ちから、亡霊に斬りかかってしまう。一方、ニューヨークの錦織は…。

 引用:少年隊PLAYZONE’90 MASK』VHS

 

劇中の流れ

①植草セリフ ②東山セリフ ③MASK(東山)④千年の夢⑤Ever Dream⑥All The World is A Stage⑦ハムレット

 

①ウエクサのセリフ

人間は眠れば夢を見る。もしかすると、俺は夢を見ているのかもしれない。永遠の眠りについたのかもしれない。これは悪夢なのか、迷いなのか。俺は夢の中をさまよう旅人のような、ただ何かを求めて彷徨う。もし、もしもこれが夢なら醒めればいい。

①は『ハムレット』第3幕第1場のハムレットのセリフをギュッとまとめたものになります。Endless SHOCK 2009ではコウイチ(堂本光一)がオーナー役のウエクサ(植草)に向かって「『眠れば夢を見る。悪夢におびえる俺~(略)』」というハムレットのセリフを言っていました。12歳の時に『MASK』を観劇したのがジャニーズ事務所に入るきっかけにもなった堂本光一くんが植草さんに向かってこのセリフを言うのは趣があるなぁなんて思いました。

 

ジャニーズの舞台ではシェイクスピア劇のセリフが至る所に出てきますが、この『MASK』がその方向性を決定づけた、ジャニーズ舞台の基礎になったのではないかと考えています。また役名が本人の名前になったのも『MASK』からです。ジャニーさんは小田島雄志先生の翻訳(「満天の星よ」と訳した方です)が好きみたいですが、おそらく小田島先生の著作はすべて読まれているのではなかろうか?と思っています…すみません話が逸れました。この①のセリフによって、今からジャニーズ的シェイクスピアワールドが始まるよと知らせてくれています。

 

②ヒガシのセリフの説明

全世界は一つの舞台。人間はそこで動き回る役者に過ぎない。それぞれ登場と退場があって、ただ与えられた役割を演じているだけ。麝香草や桜草の花は咲き乱れ、菫は風に吹かれ、甘い香りの忍冬、野花が赤一面を覆い隠しつつ。夜になると踊りに狂い、眠りにいざなわれ、花々の中で夢を見る。すると蛇がエナメルの皮を脱ぎ捨てる。明日、明日、明日、人間はこうして時の階段を滑り落ちていく。この世の終わりに辿り着くまで。この手に何も残っていない。手を貸してくれる妖精もいなければ魔法の力もない。そこにあるのはただ絶望だけ。だが誰かに助けを求める。この祈りは天の扉を開け、神の慈悲を動かし、やがてこの身が犯した罪を許されるまで。弱き者、汝の名は。

 ハムレット第1幕2場   お気に召すまま第2幕第7場

夏の夜の夢第2幕1場  マクベス第5幕5場  テンペスト

 

 上記に記したシェイクスピア劇のセリフを抽出して一つのセリフにしています。シェイクスピアは世界を舞台と捉えた作品を数多く残しており、シェイクスピア劇が上演されていたグローブ座の入り口にはローマの文人ペトロニウス「全世界は役者を演ず」の一句が掲げられていたとかなんとか。『千年メドレー』を理解するには、「世界を舞台と捉える」という表現を頭に入れておかないと分かりにくいので、いくつか作品を見ていきましょう。

 

人生はただ歩き回る影法師、哀れな役者だ。出場の時だけ舞台の上で、見栄をきったりわめいたり、そしてあとは消えてなくなる。

マクベス』第5幕第5場

 

この世は一つの世界だよ、誰もが自分の役をこなさなきゃならない舞台なのさ。

ヴェニスの商人』第1幕第1場

 

この世界という広大な劇場は、我々が演じている場面よりもっと悲惨な見世物を見せてくれる。

『お気に召すまま』第2幕第7場

 

全世界は一つの舞台。そしてすべての人間は男も女も役者にすぎない。

『お気に召すまま』第2幕第7場

 

 ジャニーさんはグループ名(嵐・B.I.Shadow)の由来にしたり、グローブ座を買っちゃったりするぐらいシェイクスピアが好きなんですが、その中でも「世界を舞台と捉えそれぞれが役割を果たす」ことを哲学的に捉えていたのではないかと考えています。(「Show Must Go On」の精神もここに通じているのかな?と考えています)

 

 また、野球好きなのもこの考えを反映させられるからかな?とも思ってしまいます。アメリカが戦後の日本に民主主義を根付かせるために野球を広めたことは周知の事実ですが、それに加えジャニーさんが子供たちに野球をさせていたのは、回が変わるごとに登場と退場があり、均等に順番が回り、それぞれピッチャー・ファーストなどの役割があり、役割を全うすることでゲームが成り立つことを学んでほしかったからかなと慮ります。また話が逸れました。とにかくこの①と②のシェイクスピア劇が③~⑦に掛かってくることになります。

 

③MASK

KYO TO KYO』『滝沢歌舞伎』『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』等々で披露されてきた、もはやジャニーズ伝統芸能のMASKの場面は、⑥All The World is A Stageの歌詞の「『場面が変わるたび 仮面をつけかえて』」に掛かっています。

 引用:『KYO TO KYO

 引用:『滝沢歌舞伎

 

次は④『千年の夢』の説明です。歌詞を見ていきましょう。

 

(Cherry Blossoms…)

長い夜の森には 悪い夢ばかり

眠りにつくことは うなされること

 

悪魔の群れが 近づいてくる

ざわめく風が何度でも僕を 追い詰める 

 

生きてゆくのか 死に絶えるか

千年の夢 悩み続ける

 

前半部分は『マクベス』あたりかな?と考えています。ジャニーさんは夢の中とか悪夢にうなされるストーリーを非常に気に入っているようで、他のジャニーズの舞台でも出てきます。そして「『生きてゆくのか 死に絶えるか』」これはハムレット「『To be, or not to be』」第3幕第1場ですね。訳はたくさんありますが、生きるべきか死ぬべきかを下敷きにしているようです。

 

⑤『Ever Dream』は舞台版サントラCDと歌詞は同じです。ここではダンスとハムレット劇がリンクするように構成されています。『千年メドレー』の衣装の白いシャツはおそらくデンマーク王子ハムレットを模していると考えています。(どことなく王子様感がありますよねアレ。好きです)

クヨクヨするのはよせよ 君は一人きりじゃない

朽ち果てたビルの空を 悲しげに見上げてる

 

嵐 過ぎた後 日差し輝くよ

走り出せ もう一度 夢は変わらないはずさ

迷わずに どこまでも

Oh You are the runners

You are the power Yeah

 

その胸の 勇気なら 誰にも奪えやしない

いつまでも まっすぐに Oh You are the runners

You are the power Yeah

 引用:『Ever Dream』

 

振付はSixTONESジェシージャニーズ事務所に誘ったジョーイ・ティーのお父様のトニー・ティーさんがされています。曲が始まると「あぁ~~」と叫びながら、床をドンドン叩く振りがあると思うんですが、おそらく苦悩するハムレットを表しているのだと解釈しています。

 

⑥『All The World is A Stage』の歌詞を見ていきましょう。※『MASK』舞台版の歌詞

 ひそかに震えてる 仮面をつけたまま 光の裏側の 妖しさに巻き込まれて

場面が変わるたび 仮面をつけかえて

真実の 自分さえ 失くしそうなイリュージョン IT’S A SHADOW

 

Love, Everybody Needs Love Everybody Wants Love, Everytime

 Love, Everybody Needs Love Everybody Wants Love, Everytime

 

世界中がまるで大きな舞台だね 与えられた時を誰もが演じている

その場に相応しい「自分」に成り切って

 

ひそかに震えてる 仮面をつけたまま 光の裏側の 妖しさに巻き込まれて

場面が変わるたび 仮面をつけかえて

 真実の 自分さえ 失くしそうなイリュージョン IT’S A SHADOW

 

今僕らの ステージの 輝きも ときめきだけを あぁ 感じるための 幻さ…

いつか消える

 

YOU DREAMS, YOU KNOW…

THE WORLD IS A ATAGE…

I KNOW

Boo…Boo…Oh…

 

ひそかに震えてる 仮面をつけたまま 光の裏側の 妖しさに巻き込まれて

場面が変わるたび 仮面をつけかえて 夢から醒めるたび また夢見てイリュージョン

IT’S A SHADOW

お気に召すまま マクベス シェイクスピア

 

色付けした通りシェイクスピア「世界を舞台と捉える」考えとリンクさせるために、原曲の『She's A Woman』から歌詞を変えたようです。

 

「場面(けしき)が~」のところで、手で球体を作る動作をするのですが、これはおそらく『ハムレット』第1幕第5場のセリフ「the globe」を表していると考えられます。

「the globe」は①混乱した頭②グローブ座(舞台)③ヘラクレス(地球)を指していると考えられているのですが、ここでは3つ全てを指しているのだと思います。

 

③のヘラクレスについて『ハムレット』をまだ読まれていない方には意味がつかめないと思うのですが、ヘラクレスハムレット理想の人(なりたい自分・正義)の象徴として物語の中で出てきます。手で作った球体と対峙する=なりたい自分の像と葛藤するということをダンスで表現しているのかな?と考えています。

 

ハムレット』は解釈が複数あるので、ジャニーさんが地球=ヘラクレスを意識していたのか確証はなかったのですが、2013年の『JOHNNYS' 2020 WORLD』でSexy Zoneの佐藤勝利くんが「肩に地球を担いだヘラクレス」の像(地球)にぶつかる事故の演出(「世の中の関節は外れてしまった。あぁ、なんと呪われた因果か。それを直すために生まれてきたのか」ハムレット)があったので、ヘラクレスを意識していると思っています。

 

ハムレット劇のシーン

ジャニーさんのご友人でもある蜷川幸雄さん演出の『ハムレット1幕4場~5場のシーンです。ジャニオタなら一度は聞いたことのある「満天の星よ」の場面です。

 

終盤のハムレットの世界と現実世界が交差する場面が『千年メドレー』と関わってきます。終盤のシーンは次の通りです。ハムレット(ヒガシ)が唯一心を許している親友のホレーショー(ウエクサ)が、亡霊役のニシキ(少年隊での活動を勝手に辞めニューヨークへ行った裏切り者)に対し、「裏切り者に死を、その胸に剣を」と叫びながら刺し殺します。この場面で「裏切り者に罰を与える=正義が果たされた」ことを暗示するように、舞台に地球(正義・ヘラクレスの象徴)がバーンと浮かび上がります。ここで⑥の手で地球を作るダンスとリンクします。私の文章力がない為、何言ってんだかわからない人が多いと思いますので、ぜひぜひ『MASK』観てください。

 

 

ジャニーさんは『PLAYZONE’90 MASK』にかなり手ごたえを感じていたのではないかと思います。年間ベストステージにもランクインしましたし、何度も再演しましたし、好きだったんだろうなと思っています。

 

ハムレット』では劇中劇(劇の中に挿入された劇)の構造がありますが、『MASK』では逆に『ハムレット』を劇中劇として取り入れています。これはシェイクスピアのテクニックの一つですね。また、ジャニーズの舞台ではいきなり時間や空間がワープしたりしてトンチキワールド状態になると思うんですが、実はあれもシェイクスピアのテクニックの一つで「シェイクスピア・マジック(時空を移動する)」を取り入れた結果だと考えています。

 

『千年メドレー』の概要はこんな感じだと思っています。TVや雑誌で演者が『千年メドレー』の内容に関して言及しないので、憶測の域を出ないところもあるのですが、過去のジャニーさんのインタビュー記事などを読んだり、演出された舞台を一通り見た結果、こうではないかな?と思っています。

 

もちろん他の解釈もたくさんあると思います。ジャニーさんは過去に「作品を何度も何度も見て、何度も考えて欲しい」(ニュアンス)と言っていますし、シェイクスピアの作品も誕生してから400年以上たった今でも、その解釈を巡って多くの研究者が議論しています。デビュー組の中にも「当時は気づかなかったけれど、後に演出の意図がわかった」と言っていたり、その場ではわからなくても何年後かに突然演出の意図がわかるときがあったりと、それがジャニーさんのエンターテインメントの一つの形だったのかなと思うこともあります。それに加えて、端からお客さんには理解できないだろうと見下し妥協した作品を作るのではなく、最高の状態の作品を届けようとしてくださったことに、改めてジャニーさんの偉大さを感じるところでもあります。まぁジャニーさんのKAT-TUNのデビュー曲名を『開け胡麻』にしようとしたり、突き抜けた感性には追い付くことは不可能なので、もうすこし甘やかしてほしかったですが、、、

 

事務所、各方面ごめんと思いつつもまだまだ続きます 

 

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