事務所 ほんまごめん

メモ程度に書きます

ジャニーズ舞台『ANOTHER』 って何?その①

 

 

関西ジャニーズ 伝統の舞台『ANOTHER』

 

円盤化されていないこともあり、ファンの間でもあらすじは知ってはいるけど、詳細がいまひとつわからないといわれている舞台『ANOTHER』*12002年には関ジャニ∞結成前のメンバーが出演、2013年には中山優馬くんとジャニーズWEST結成前のメンバーとTravis Japanなどなどが出演、2016年に関ジュで再演(2013年をベースの演目)しています。2002年版は被爆を取り扱った作品、2013年版はシェイクスピア『夏の夜の夢』ハムレットを取り入れた作品となっています。

 

私は長らくジュニア担兼ジャニーさん担にもかかわらずブログ等でレポを一切書かずへらへら過ごしていたんですが、ジャニーさんがお亡くなりになってからいろいろ思うところもあり、ジャニーさんが演出された舞台の考察・解説を書いていこうかなと思っています。初期SHOCKから現在までずっと残されているセリフシェイクスピアは芝居の原点」という念仏を唱えられなければ、中高生の時にシェイクスピアなんて読まなかったと思いますし、まぁ読んでもわからないことが多いのですが、ジャニーさんの作品からいろいろ影響を受けたなと思うので、一度文章にでもしようかなと思います。

 

今回は、2002年版『ANOTHER』を取り上げたいと思います。この舞台は、関ジャニ∞の結成に深く関わっていることに加え、ジャニーズ舞台で初めて本格的に戦争・差別をテーマとした作品、かつオール関西弁で関西ジュニアの舞台の基礎となった舞台であり、ジャニーズ舞台史の中でも重要な作品であったのではないかと思います。けっこう細かくメモを取れているので、書いていきます。

 

 

黄金時代から2002年までのジュニアの状況

ジャニーズの舞台は、シェイクスピア作品、ウエスト・サイド物語、日本の歴史に加えジュニア達が直面している状況が理解できないと、なんだこれ?状態(いわゆるトンチキ)になる確率が高くなります。ですので、とりあえず当時のジュニアの状況(黄金時代から冬の時代の流れ)を確認しましょう。

1997年頃のジュニアは、月曜日はミュージック・ジャンプ収録、火曜日は愛LOVEジュニア収録、木曜日はMステのリハ、金曜日はMステ本番、土曜日はミュージック・ジャンプのリハかレッスン、日曜日はレッスン、そして1998年からは8時だJ、愛ラブB.I.G.、やったるJなどのゴールデンタイムのレギュラー番組が加わり、いわゆるジュニア黄金期を迎えます。しかしジュニアの不祥事によりタッキーなど第一線で活躍していたジュニアのデビューが見送られ(黄金期の勢いを止めないため社長にデビューさせられないと言われ)、代わりに嵐のデビューが決まり、その後タッキー、翼くん、すばるくん、小原くんが一緒に組むと言われていた「X」というグループもデビューのめどが立たず、2001年3月にゴールデンタイムの番組(Music-enta)の終了とともに、ジュニアの黄金期も終焉を迎えます。(このころファンの間ではいろいろなグループ構想の話が漏れ伝わっていて、「X」というグループは、X JAPANを好きなタッキーのためにデビュー曲をYOSHIKIさんに書いてもらおうとしていたとかそんな話だった気が?だからデビュー曲をYOSHIKIさんに書いてもらう夢をSixTONESに託したの??ジュニアの誰かアホのふりしてタッキーに聞いてみてほしい、、、 あくまでファンの間で広まっていた話ですが)

 

関西ジュニアに関して言えば、ほぼ仕事がなくなり年に数回ある先輩のコンサートのバックで生存確認をする状態までになっていました。そんな2002年、降って湧いてきたような松竹座で単独の舞台『ANOTHER』、初日の数日前には振付師さんから厳しいことも言われます。

「はっきり言うと、関西ジュニアって何年か前と違ってさ、一時期勢いがあったときから時間が経ってんだよ。君らその時すごい子供だったの。ホントにさ、今思いっきりやらなかったら、お前らがしっかりやらなかったら関西ジュニア、ヤバイよな。すごいヤバイと思う。ホントに普通のレベルでやってるんだったら、ジャニーズJr.辞めればいいんだよ

村上くんは、振付師さんの言葉を受け、公園でダンスの自主練に励みます。振付師さんからの喝もあり「この舞台が成功しなければ、関西ジャニーズの未来ない」と意気込みんで迎えた初日、ガラガラ。無料チケットも配布して席を埋める状況でした。しかし舞台が評判を呼び人気公演となっていきます。個人的な感覚では、たしかにみんな20回ぐらい入ってたけど笑、客席も埋まっていたような気はします。※関ジュはレッスン場がないから、みんな公園とかで練習してたんですよね

 

■『ANOTHER』ストーリー(1幕)

シンゴ(村上)ユウ(横山)リョウ(錦戸)ヒロ(内博貴)マル(丸山)ヤス(安田)イチ(浜中文一)の、年齢がばらばらの少年7人は青春の卒業旅行として南の海をクルーザーで航海中、嵐に巻き込まれ遭難してしまいます。少年たちが命からがら漂着したのは、日本なのかどこなのか見当もつかない無人島。いつか救出されることを信じ、少年達は島での生活を始めます。自らの手で火をおこし、家を作り、食料を探す。そんなサバイバル生活に慣れていくが、日に日にホームシックになっていく少年たち。帰る当てのない苛立ちと不安から、ヒロ達はリーダーであるシンゴ、ユウに不満をぶつけ、7人は決裂。シンゴはシンゴでメンバーの思いが一つにならないことに苛立ちを覚える。そして年齢も若く、繊細なリョウは、精神状態が悪化し南の海に浮かぶ母親の面影を追いかけ命を落としてしまう。弟のように可愛がっていたリョウを自分たちの至らなさで失ったことに絶望する少年たち。そんなとき、死を悲しむシンゴの前に一人の少女(キララ)が現れ、島のお守りでもある貝の首飾りを渡す。どうやら島には人間がいるようだが、なにか様子がおかしい。そして少年たちは、住人が年に一度行う「儀式」を目撃してしまう。儀式を行っていた若者たちのリーダーハリオス(すばる)は6人に「今すぐ。この島を立ち去れ」と命ずる。

 

①オープニング曲「旅人」

 【考察】ミュージカルのオープニングナンバーに合わせて自己紹介をする流れなんですが、実はこれは初代ジャニーズから現在のジュニアにまで引き継がれている「自己紹介ラップ」の元ネタであると言われています。ジャニーズ自体の出自は一応ミュージカルなので、メンバーが別のメンバーを紹介するなごりが自己紹介曲に繋がっているようです。

 

②航海中に嵐に巻き込まれ、到着した無人島で不安になる少年たち

無人島に到着した少年たちは、日本に残してきた家族のことを考えます。お母さんは子供たちだけで航海することに反対していたな、なんで自分は言うこと聞かなかったんだ、、、お母さん心配しているかな?のシーン

(安田)誰もおらん島で生きてるなんて、思わへんねんやろな…

(丸山)絶対大騒ぎやな……

(浜中)どうしたら、、どうしたらええんやろ、、、、、、、

(村上)アホか!!!考えんなってそんなこと

(浜中)<号泣>え~ん

(村上)<浜中に向かって言う>泣いたら何か変わんのか?泣いたらここ抜け出して家帰れんのか?

(横山)そりゃお前(村上)はええわ、、帰ったって待っててくれる人もおらんしな、みんなの気持ちなんかわからんやろ

(村上)<横山を殴る>

(横山)<素直に謝る>すまん、(親の事言って)悪かった

(村上)<許す>こんなことしてる場合ちゃうな

(横山)これからどうするかやな、、、、、

(村上)<満面の笑みで>生きようや!!!

(丸山)戦いやな!!!なんか怖いけどワクワクしてきた

(安田)楽しんでさ、みんなで帰れる手段考えようや!!!

(村上)みんながんばれるか?みんなで帰れる日まで生きようや!!!

(全員)うん

 【考察】関西民もびっくりするほどの関西弁で話は進みます。そして、どうやら村上くんは何かの事情で親がいないことが判明します。また、少年たちのリーダー格が村上くんと横山くん、陽キャが丸山くんと安田くん、末っ子気質が錦戸くん、浜中くんという位置づけのようです。「遭難した少年たちの関係性」「当時の関西ジャニーズの関係性」をリンクさせながら物語を観れるようになっています。なんとか関西ジャニーズを引っ張っていかないといけない村上くんと横山くんがグループを鼓舞していきます。舞台『少年たち』では「少年院=デビューを目指すジャニーズJr.という檻」として観れるように構成されていますが、この無人島は事務所から見放された島の隠喩なのでしょうか?つらい笑 まぁ物語自体はテンペストが下敷きではあるんですが

 

③生きていくために、サバイバル生活を始める少年たち

少年たちは、いつか救出されることを信じて行動します。まずは空から見て遭難したことが分かるように、旗に見立てて服を干します。この場面で『ANOTHER』伝統の衣装の葉っぱのパンツが登場します。2002年は安田くんと浜中くん、2013年は向井くん、平野くんが引き継いでいます。下記は参考イラストです。こんな感じです。

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そして、水を探し、火をおこし、家を作り、食料を探したりとサバイバル生活を始めます。この物語で一番陽気な音楽に合わせて話は進んでいきます。

(全員)ラ~ララ ラ~ララ 家をつくろ~う♪

(村上)building oh my house みんなで力を合わせ♪

(内)なんでもいいから 材料と具 集めよう♪

(錦戸)むちゃくちゃ大自然 がんばれサバイバール♪

(丸山)トロピカルな気分じゃ もうすぐ野垂れ死に

(全員)Oh my house 日当たり良好♪

(全員)Oh my house 丈夫で長持ち♪

(全員)Oh my house ベットは広々♪

(全員)居心地満点 Ocean viewだぜ♪

(全員)家をつくろ 木を組んで♪ 家をつくろ 足場固め♪

(全員)家をつくろ 力合わせ♪ 明日のために♪

~(略)~

 【考察】陽気なミュージカルソングで、物語で一番少年たちの心が一つになって希望に満ち溢れている感が出ていてよかったんですが、歌が標準語なんですよね、、、、「だぜ」なんて関西の子は言わないから、関西弁を組み込んでも良かったんじゃないかな?ちょっと惜しいなと思いました。

 

④極度のホームシックに陥り、少年たちが揉めだす

希望に満ち溢れていた場面から一転、遭難して3日、未だに救出されない状況に不安が増す少年たち。ついには村上くんと横山くん以外は極度のホームシックに陥り「お母さんに会いたい、家に帰りたい」「もう助からない、やってられない」など悲観的な言葉を発するようになります。

(村上)アホかお前ら、わがままばっかり言いやがって、甘ったれんな。それ俺だって帰りたいよ。ほんまは泣き出したいくらいや。でもな、お前らの顔見とったら励まされんねん。俺が泣きごと言ったらどうなんねんって。だから一生懸命生きてる。

(横山)もういいねん、シンゴ。みんなわかってんねん。ただ言ってみたかっただけや。つらい思いを吐き出したかっただけや。

(村上)<みんなを見て>約束したやろ!?力を合わせてみんなでがんばろって。なぁ!!!なぁ!!!!

(丸山・安田・内・錦戸・浜中)<その場を立ち去り場面が変わる>

 

(丸山)いつまで待ったらええねん!!!このままやったら俺らは死んでしまう!!

(内)もうシンゴたちの言うことなんて聞かへん。騙されへんぞ。

 <反抗ソングを歌う>

 

(横山)<ヨコ現れ、内くんたちに向かって>さっさと帰れぇぇぇぇぇぇ。帰りたい奴は帰れぇぇぇぇぇ。みんな自由なんや、好きなように好きなところに行ったらええんや、海があんなら泳いだらええんや。

待つんや、もう少しや、人生待たなアカン時がある、それが今なんや

 

(安田)<ヨコの首をつかんで>俺たちは帰りたいんや(泣)

(横山)<マルをつかんで>お前はどうやねん。言ってみろや。なんやお前ら!!!!!!

(内)お前(ヨコ)は大阪に帰りたくないんか!?<ヨコと殴り合い>

(横山)お前らのこと考えてんねんやろうが……<無言で内くん立ち去る>待てや

【考察】グループの思いが一つにならず焦る年長者、兄組の思いを汲み取れず弟組で結束を固め、しまいにはメンバー同士で殴り合い…観客は「推しのグループにもそんなことあったな…ハハハ笑」なんて思いながら、現実世界とリンクさせながら観れます。「人生待たなアカン時がある、それが今なんや」というセリフをどういう気持ちで言っていたのでしょうか…

 

⑤神経衰弱に陥り、入水自殺

リョウ(錦戸)はもう一生この島から脱出できない、もう二度とお母さんには会えない悲しみから精神に異常をきたします。南の海に浮かぶ母親の面影を追いかけ、そのまま命を落としてしまいます。

(錦戸)お母さん、ぼくめっちゃ帰りたいねん。ごめんな、わがまま言って。

でも絶対海が見たかってん。

お母さん言ってたやんな「友達だけで船を乗るのは危ないからやめときなさい」って。

でもなキレイやったで、南の海は。

雪? 雪や!!<舞台に雪が降る>

故郷の雪が降ってきた。お母さんと一緒に見た鞍馬の雪

この海を渡ったら、京都に帰れる。

僕帰るよ、もうすぐ。もうこの島はいやや。

お母さん、待っててくれるやんな? すぐ帰るから!!

寒い、寒い。お母さ~ん、きれいやったで、南の海。

<セリが下がって、錦戸くんが消え、空から花が降ってくる>

 【考察】突然の鞍馬の雪?突然のトンチキはジャニーの合図✨これは、牛若丸の話をベースにしていて、どこかで生きているであろう母に会いたくて仕方がないという気持ちを重ねています。ジャニーさんは牛若丸(義経)が大好きで、「鞍馬」「天狗」などのフレーズを使って、とにかくストーリーにぶち込んできます。

あと、「夏に雪が降る」演出ですが、Sexy サマーに雪が降ると同じ元ネタの『南の島に雪が降る』のオマージュです。事務所舞台ではよく引用されるネタなので、未読・未視聴の方は是非見てね!!

amzn.asia

入水自殺は『ハムレット』のオフィーリアの死を重ねているんですが、、、、オフィーリアは神経衰弱に陥り、小川で溺死するのですが、なぜ自ら小川に入っていったのかは解釈が複数あります。どうやらジャニーさんは、水辺に愛する人の面影が映り、もう一度会いたくなって、愛されたくて入水したという解釈をされているようです。なるほど!!ジャニーさんは義経ハムレットを加える演出がかなりお好きなようで、ジャニーズ舞台では多々出てきます。

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引用:ジョン・エヴァレット・ミレーの「オフィーリア」(1852年)
 

⑥レクイエム

リョウが死に、「俺たちが殺したんだ」と自分たちを責める少年たち。

 

 

【考察】曲レクイエムの振付で、亡くなった錦戸くんが担がれているのは、ウエスト・サイド物語のトニー(ハムレット)のオマージュです。ジャニーズ舞台で初めて担いだのは『MASK』だと思います。ジュニアのコンサートでも担ぐ演出があります。あと、この白い花にも意味があると思うのですが、何の花なのかわからなくて(内くんの顔ばっかり見てたごめん)

ハムレット』では花言葉がたくさん出てくるので、おそらくこの花にも死に関連した花言葉があるのではないかと思います。ご存じの方いらしたら教えてほしいです。

 

悪夢を見るシンゴ

(村上)夢であってくれ、こんなこと悪い夢や。

(謎の女性(キララ))<村上の背後にいきなり登場>涙を拭いて、苦しみも悲しみも乗り越えるためにあるものなの

(村上)誰ですか?あなたは?

(キララ)これは島の宝物。持っていると勇気が出るわ<村上に首飾りを渡し、消える>

(村上)待ってくれ!!島に人がいた?幻か?誰や?誰やねん!!俺は悪夢を見てんのか?

(錦戸)<幽霊となって登場>

 

 【考察】グループの中で一番元気だった村上くんが、リョウの死によりバランスを崩し始め悪夢にうなされ始めます。ジャニーさんは他の舞台でもストーリーに「悪夢に悩まされる」を入れてきます(千年メドレーもですね)。そして、錦戸くんが幽霊になって舞台上の所々に出没するマジックが始まります。ジャニーさんは、ジュニアの力量を補うために瞬間移動のマジックを取り入れていると言われることが多いのですが、もう一つの意図として「シェイクスピア・マジック」の1つの「テレポーテーション」を取り入れたかったのかな?と推測しています。シェイクスピアの「テレポーテーション」とは何だ?という話は識者に聞いていただきたいところなんですが、「場面を切り替えず人物を移動させる」的なことで、それをマジックを使って華やかに演出したかったのかな?と思っています。ジャニーズの舞台ってよく瞬間移動するんですよ、ほんとに笑

 

無人島だと思っていた島に、謎の人物が登場

悪夢から醒めると、島の墓場にいた村上くん。横山くんたちもさまよって墓場に辿り着きます。その時、島から謎の人物たちが目の前に現れ、儀式を始めます。

(セーニャ:謎の人物たちのリーダー)すぐにこの島を立ち去ってもらいたい。沈黙を守ってきた神聖な島を汚してほしくないのです。

(ハリオス:すばる)今すぐにこの島を出て行ってくれ。明日は神聖な慰霊の日。1日の時間の猶予を与えよう

(セーニャ)異邦人は立ち去りなさい

(ハリオス:すばる)約束しろ、この神聖な島から立ち去れ

(村上・横山)<謎の人物たちのグループにリョウの亡霊を見る>リョウ~~~

 <1幕終了>

 

【補足】どうやら、謎の人物たちは、明日執り行われる「慰霊の日」のために、無人島にやってきたようです。島から脱出する手段を持たないのに、今日中に島から立ち去れと言われ焦る村上くんと横山くん!!!っというところで1幕終了です。

 

被爆者を取り扱った2幕へつづく

 

mihiromemo.hateblo.jp

 

*1:1993年にSMAPで初演、東京のアートスフィアと京都の南座を衛星中継し、二つの場面を同時進行しながら話を展開する演出