事務所 ほんまごめん

メモ程度に書きます

千年メドレー

 

千年メドレーとは

少年隊が1986年から2008年まで毎年夏に青山劇場で上演されていたミュージカル『PLAYZONE』の歴史の中で、1990年の『少年隊PLAYZONE’90 MASK』の劇中で東山さんが披露したダンスメドレーのことを指します。しかし、舞台のサントラCDと劇中歌の内容(曲名・歌詞)が違うことによってさまざまな混乱(悲劇)と謎を生むことになります。「『千年メドレー』をバックで踊れるってジュニアでもメジャーなほうに来たなと思った(国分太一)」「選ばれし者しか踊れない(三宅健)」等の発言の通り、ジュニアの憧れの曲でもありました。メドレー全体が7分程あり踊り続けなければならない、またダンスの名手の東山さんに見劣らないダンスをしなければならないということで、ダンスが上手い人しか披露できないメドレーとしてファンの間でも伝説となっていきました。

 引用:2007年6月 ザ少年俱楽部プレミアム

 

 

千年メドレーの誕生 

PLAYZONE’90 MASK』のサントラCDと劇中歌の歌詞・曲名が変わったのには、劇中劇「ハムレット」ないしはシェイクスピアが大きく関わっています。『千年メドレー』は劇中劇のセリフと歌詞、シェイクスピア劇とダンスの振付がリンクするように成り立っています。まずは、『千年メドレー』が登場する前後の劇中の流れから説明します。

 

劇中の流れ

①植草セリフ ②東山セリフ ③MASK(東山)④千年の夢⑤Ever Dream⑥All The World is A Stage⑦ハムレット

 

①ウエクサのセリフ

人間は眠れば夢を見る。もしかすると、俺は夢を見ているのかもしれない。永遠の眠りについたのかもしれない。これは悪夢なのか、迷いなのか。俺は夢の中をさまよう旅人のような、ただ何かを求めて彷徨う。もし、もしもこれが夢なら醒めればいい。

①は『ハムレット』第3幕第1場のハムレットのセリフをギュッとまとめたものになります。

 

②ヒガシのセリフの説明

全世界は一つの舞台。人間はそこで動き回る役者に過ぎない。それぞれ登場と退場があって、ただ与えられた役割を演じているだけ。麝香草や桜草の花は咲き乱れ、菫は風に吹かれ、甘い香りの忍冬、野花が赤一面を覆い隠しつつ。夜になると踊りに狂い、眠りにいざなわれ、花々の中で夢を見る。すると蛇がエナメルの皮を脱ぎ捨てる。明日、明日、明日、人間はこうして時の階段を滑り落ちていく。この世の終わりに辿り着くまで。この手に何も残っていない。手を貸してくれる妖精もいなければ魔法の力もない。そこにあるのはただ絶望だけ。だが誰かに助けを求める。この祈りは天の扉を開け、神の慈悲を動かし、やがてこの身が犯した罪を許されるまで。弱き者、汝の名は。

 ハムレット第1幕2場   お気に召すまま第2幕第7場

夏の夜の夢第2幕1場  マクベス第5幕5場  テンペスト

 

上記に記したシェイクスピア劇のセリフを抽出して一つのセリフにしています。シェイクスピアは世界を舞台と捉えた作品を数多く残しており、シェイクスピア劇が上演されていたグローブ座の入り口にはローマの文人ペトロニウス「全世界は役者を演ず」の一句が掲げられていたとかなんとか。『千年メドレー』を理解するには、「世界を舞台と捉える」という表現を頭に入れておかないと分かりにくいので、いくつか作品を見ていきましょう。

人生はただ歩き回る影法師、哀れな役者だ。出場の時だけ舞台の上で、見栄をきったりわめいたり、そしてあとは消えてなくなる。

マクベス』第5幕第5場

 

この世は一つの世界だよ、誰もが自分の役をこなさなきゃならない舞台なのさ。

ヴェニスの商人』第1幕第1場

 

この世界という広大な劇場は、我々が演じている場面よりもっと悲惨な見世物を見せてくれる。

『お気に召すまま』第2幕第7場

 

全世界は一つの舞台。そしてすべての人間は男も女も役者にすぎない。

『お気に召すまま』第2幕第7場

 

③MASK

KYO TO KYO』『滝沢歌舞伎』『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』等々で披露されてきた、もはやジャニーズ伝統芸能のMASKの場面は、⑥All The World is A Stageの歌詞の「『場面が変わるたび 仮面をつけかえて』」に掛かっています。

 

④『千年の夢』

(Cherry Blossoms…)

長い夜の森には 悪い夢ばかり

眠りにつくことは うなされること

悪魔の群れが 近づいてくる

ざわめく風が何度でも僕を 追い詰める 

生きてゆくのか 死に絶えるか

千年の夢 悩み続ける

「『生きてゆくのか 死に絶えるか』」これはハムレット「『To be, or not to be』」第3幕第1場ですね。訳はたくさんありますが、生きるべきか死ぬべきかを下敷きにしているようです。

 

⑤『Ever Dream』

舞台版サントラCDと歌詞は同じです。ここではダンスとハムレット劇がリンクするように構成されています。『千年メドレー』の衣装の白いシャツはおそらくデンマーク王子ハムレットを模していると考えています。

クヨクヨするのはよせよ 君は一人きりじゃない

朽ち果てたビルの空を 悲しげに見上げてる

 

嵐 過ぎた後 日差し輝くよ

走り出せ もう一度 夢は変わらないはずさ

迷わずに どこまでも

Oh You are the runners

You are the power Yeah

 

その胸の 勇気なら 誰にも奪えやしない

いつまでも まっすぐに Oh You are the runners

You are the power Yeah

 引用:『Ever Dream』

 

振付はSixTONESジェシージャニーズ事務所に誘ったジョーイ・ティーのお父様のトニー・ティーさんがされています。曲が始まると「あぁ~~」と叫びながら、床をドンドン叩く振りがあると思うんですが、おそらく苦悩するハムレットを表しているのだと解釈しています。

 

⑥『All The World is A Stage』

※『MASK』舞台版の歌詞

ひそかに震えてる 仮面をつけたまま 光の裏側の 妖しさに巻き込まれて

場面が変わるたび 仮面をつけかえて

真実の 自分さえ 失くしそうなイリュージョン IT’S A SHADOW

 

Love, Everybody Needs Love Everybody Wants Love, Everytime

 Love, Everybody Needs Love Everybody Wants Love, Everytime

 

世界中がまるで大きな舞台だね 与えられた時を誰もが演じている

その場に相応しい「自分」に成り切って

 

ひそかに震えてる 仮面をつけたまま 光の裏側の 妖しさに巻き込まれて

場面が変わるたび 仮面をつけかえて

 真実の 自分さえ 失くしそうなイリュージョン IT’S A SHADOW

 

今僕らの ステージの 輝きも ときめきだけを あぁ 感じるための 幻さ

いつか消える

 

YOU DREAMS, YOU KNOW…

THE WORLD IS A ATAGE…

I KNOW

Boo…Boo…Oh…

 

ひそかに震えてる 仮面をつけたまま 光の裏側の 妖しさに巻き込まれて

場面が変わるたび 仮面をつけかえて 夢から醒めるたび また夢見てイリュージョン

IT’S A SHADOW

お気に召すまま マクベス シェイクスピア

 

色付けした通りシェイクスピア「世界を舞台と捉える」考えとリンクさせるために、原曲の『She's A Woman』から歌詞を変えたようです。

 

「場面(けしき)が~」のところで、手で球体を作る動作をするのですが、これはおそらく『ハムレット』第1幕第5場のセリフ「the globe」を表していると考えられます。

「the globe」は①混乱した頭②グローブ座(舞台)③ヘラクレス(地球)を指していると考えられているのですが、ここでは3つ全てを指しているのだと思います。

 

③のヘラクレスについて『ハムレット』をまだ読まれていない方には意味がつかめないと思うのですが、ヘラクレスハムレット理想の人(なりたい自分・正義)の象徴として物語の中で出てきます。手で作った球体と対峙する=なりたい自分の像と葛藤するということをダンスで表現しているのかな?と考えています。

 

ハムレット』は解釈が複数あるので、ジャニーさんが地球=ヘラクレスを意識していたのか確証はなかったのですが、2013年の『JOHNNYS' 2020 WORLD』でSexy Zoneの佐藤勝利くんが「肩に地球を担いだヘラクレス」の像(地球)にぶつかる事故の演出(「世の中の関節は外れてしまった。あぁ、なんと呪われた因果か。それを直すために生まれてきたのか」ハムレット)があったので、ヘラクレスを意識していると思っています。

 

ハムレット劇のシーン

ジャニーさんのご友人でもある蜷川幸雄さん演出の『ハムレット1幕4場~5場のシーンです。ジャニオタなら一度は聞いたことのある「満天の星よ」の場面です。

 

終盤のハムレットの世界と現実世界が交差する場面が『千年メドレー』と関わってきます。終盤のシーンは次の通りです。ハムレット(ヒガシ)が唯一心を許している親友のホレーショー(ウエクサ)が、亡霊役のニシキ(少年隊での活動を勝手に辞めニューヨークへ行った裏切り者)に対し、「裏切り者に死を、その胸に剣を」と叫びながら刺し殺します。この場面で「裏切り者に罰を与える=正義が果たされた」ことを暗示するように、舞台に地球(正義・ヘラクレスの象徴)がバーンと浮かび上がります。ここで⑥の手で地球を作るダンスとリンクします。私の文章力がない為、何言ってんだかわからない人が多いと思いますので、ぜひぜひ『MASK』観てください。

 

 

「光の裏側の妖しさに巻き込まれて」の「光」と「仮面をつけかえて」の「仮面」は何を表しているのか

『千年メドレー』(ジャニーさんの作品は)を理解するには、シェイクスピアの作品を読み解き、作品から得た答えを当て嵌めていく必要があると考えています。まずは「光」についてですが、これは「光」と「光の裏側(影)」がセットであるという理解が必要になります。シェイクスピアは「光と影」の概念を多くの作品に取り入れ、光の背後には常に影があること、影が光を支えているということを描いています。そして作品の中で「影」を描いては、物事の本質を問い、外見にとらわれる愚かさを描いています。この「光と影」の考えに非常に影響されたジャニーさんは、ジャニーズのシンメ論にこれを取り入れています。シンメ(シンメトリーになって踊る)とは、ライバル関係であり、水と油のような関係性の時もあれば、対であり運命共同体でもあります。光にとって「影」は「もう一人の自分(「アイドルではない本当の自分」「アイツみたいになってみたい」でもある)」であり、選択してこなかった(無意識に抑圧し姿を現すことを禁止していた)自分自身の人格の一面でもあります。この「影」の自分に取り憑かれると、自分自身を見失い闇落ち(「真実の 自分さえ 失くしそう」)してしまいます。そのような状態を「It’s shadow」というワードを用い『千年メドレー』で指摘しています。『千年メドレー』が誕生した『PLAYZONE’90 MASK』の物語の中には、様々な「影」が描かれ、登場人物が「影」の力に悩まされ、メンバーを疑ったり、自分を疑ったり、悲観したり、自分が持つ「光」を失いそうになってしまします。物語から推察すると、「光」=少年隊の自分(世間が求めているアイドル像を演じている自分)、「影」=少年隊ではない自分(アイドルではない自分・自分がなりたいアイドル像)っといったところでしょうか。

 

次に「仮面」についてですが、これはシェイクスピア作の『お気に召すまま』が下敷きになっています。シェイクスピアは「世界はすべて一つの舞台」と人生を舞台に例え、「人生は芝居、人は役者」と言う「世界劇場(テアトラム・ムンディ)」の概念を一貫して作品に取り入れています。人は自分でも気づかないうちに演技(仮面をつける)をしていて、「真面目な私」「くだけた私」「密かにジャニオタな私」など仮面を付け替え生活をしています。しかし、様々な仮面を付け替えていくうちに、本当の自分とは何なのか?と言う疑問が生じてきます。仮面を被り続けながら虚構を生きること(「演じながら人生を生きる」=「人生は芝居、人は役者」)は、空しく儚いものだと言えます。アイドルの仮面が分厚くなるにつれ、こんなの本当の自分じゃないと主張するアイドルの姿がそこにあるかもしれません。

 

しかしシェイクスピアは、たかが芝居(アイドル)、されど芝居(アイドル)、一瞬にすべてをかけ舞台の上で輝こうとする、それが人生(アイドル)の面白さだと説いています。仮面を付け替えることを肯定的に捉え、どの仮面をつけたときも一瞬一瞬を大切に生きることで人生を輝かせることもできると指摘しています。『PLAYZONE’90 MASK』の『千年メドレー』が始まる前の東山さんのセリフに「明日、明日、明日〜」と言う『マクベス』の tomorrow speech が読まれます。このセリフは、人生の儚さを芝居の儚さに重ねて語ったものなんですが、これを転じて『千年メドレー』で自分の人生とアイドル人生の儚さを描いています。『PLAYZONE’90 MASK』の劇中では、錦織さんの「あっけなくてそっけなくて、数多くの悲劇とほんの少しの喜劇とで出来ている、それが俺たちの人生なんだ」というセリフがあり、そこにも繋がっています。アイドルの仮面を被り続ける人生は虚しいものなのか?そんな人生に未来はあるのか?違う仮面をつけて生きることの方が正しいのではないか?的なことが『PLAYZONE’90 MASK』では描かれていて、その辺りと『千年メドレー』が繋がってくる構成になっているようです。

 

歴代の千年メドレー

本家 PLAYZONE’90 MASK
KinKi

Kyo to Kyo

森田剛

千年メドレーっつったら森田剛!!!オタクは黙って森田剛!!!

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引用:KYO TO KYO カミセン公演の千年メドレー 

タッキー

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東山さんに真正面から挑む堂本光一の『千年メドレー』

 引用:LAWSON PRESENTS KinKi Kids '97 VHS

今井翼の情熱の4つ打ちロック『千年メドレー』

 引用:『World's Wing 翼07』

 

mihiromemo.hateblo.jp

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千年メドレーの追っかけをしていたつもりでオタクを続けていた気もするんだけど、結局のところ東山さんと剛くんの千年メドレーの幻影を追っていただけの気がする。長年わたしは何をやっていたのだろう、ただただ憂鬱という今日この頃